投球におけるゼロポジション

まず、投手にとってもっとも大事な事とも言える、ゼロポジションについて説明します。
ゼロポジションとは簡単に言えば肩のナチュラルな位置のようなもので、投球動作ではこのゼロポジションを極力維持していることが望ましいです。

まず、横から見た場合、肩よりも少し前、つまり肘が出ている事と、 前から見て肘が肩と平行あるいはそれより少し上のライン上にあることです。投球の大原則、肘を肩より下げないことがゼロポジションでの投球の基本です。 プロのリリースを見れば、どんな投手もほぼ例外なくこのポジションであるはずです。

zeroposition

サイドスローやアンダースローも、背中の軸の傾きが違うだけで、位置は同じです。 どんな投げ方であれ、たとえそれが内野手であろうとも、投球時にはこのゼロポジションであることが ハイパフォーマンスを引き出すため、怪我防止のためには必要不可欠なのです。 このゼロポジションで投球さえできていれば、肩肘を壊すことも防げます。

このゼロポジションができなていない状態では、間違いなく肘が下がっており、制球力が下がっています。人間最大挙上位が脱臼位をとるのであって、ゼロポジションが一番リラックスしたと言われています。全てのスポーツはこのポジションで行われています。佐藤義則元投手ですけども、彼が30何才でノーヒットノーランをしたのは、このゼロポジションを非常に使うのが上手だったという事です。松坂選手もきれいなゼロポジションをとっているも印象的です。

ワインドアップ期間におけるゼロポジション
ワインドアップやノーワインドアップなど個人によってやりやすい方法があるかと思いますが、基本は変に捻りを加えず、足を上げ軸足で真っ直ぐ立ちます。この時高く足を上げすぎたり、無理に捻りを加えるとバランスを崩したり後ろに反ってしまい、体の開きなどのフォームの乱れにつながりやすいので注意が必要です。まず片足でバランスよく立てること、これが重要です。

できない選手には、片足で立った状態でケンケンをさせたり足元のボールを拾わせるなどの軸足でバランスがしっかりと取れるようになるようなトレーニングが有効です。この時のバランスの乱れはその後の投球フォームの乱れにつながります。逆に、ここを直すだけでフォームが安定し、コントロールが向上する選手もいます。

テイクバック期におけるゼロポジション
ワインドアップからトップの位置、つまり頭の近くにボールを持っていく際に上腕が肩甲骨面より後ろに行かないように注意しながら、小指を二塁方向に向けて肘から持ち上げる要領で腕を伸ばさずにコッキングの動作を行います。このとき肩は絶対にすくめず、力を入れないで「スッ」と上げるようにリラックスして行ってください。トップの位置においては、肘はできるだけゼロポジションの高さまで上がっていること、両肩を結ぶラインまで上がっていることが望ましいです。腰を反らせることで肘の高さを確保したり(代償運動)反った反動を使って球速を獲得しようとする選手も見られますが、やはり腰に負担がかかります。ゼロポジションも乱れやすく、ケガをしないという観点からはお勧めできません。

ターゲッティングにおけるゼロポジション
リリース前後ではターゲッティングなるものが必須です。 ターゲッティングとは、リリース前後時に肘が投球方向を指すような動作が表れることを言います。肩・腕がゼロポジションを維持する、ということです。肘先行の腕、前傾の上体、下半身によって体全体でCの字(逆Cアーチ)を描いているのが ターゲッティングの本来の姿です。形だけを真似してもゼロポジションでなければ肩や肘にとって非常に危険な投球動作であり、絶対に行ってはならないことです。 「ゼロポジションでの投球」である事がターゲッティングの本当の目的です。

コツとしては、まず腕の角度を90度前後に保つこと、そしてゼロポジションでの投球を意識することです。意識的に肘を先行させるような意識はせず、、肘から先を遅らせると言った方が感覚的には近いと思います。

肘の高さとリリースポイントにおけるゼロポジション
トップの位置からボールリリースまでの注意点です。

a. トップの位置において、肘はできるだけゼロポジションの高さまで上がっていること.少なくとも、両肩を結ぶラインまで上がっていることが望ましい.
b.

トップの位置からその高さをキープしながら、リリースポイントまで急加速し、肘の内側から腕が前に出るようにすること。

ここから、腕は肘を中心に鞭のようにしなり、体幹の回転と腕の加速と共に、肩甲骨は前方に移動する(肩甲骨外転).

グローブ腕の使い方(体の開きのコントロール)におけるゼロポジション
ボールを持っている方ではなく、グローブをはめている方の腕(グローブ腕)の使い方です。これは体の開きをコントロールすると共に、しっかりゼロポジションでボールリリースするための補佐的役割をします。

a. 振りかぶった状態からいったん下に降ろす動作は、①-aおよび①-bと同じで、ボールを持った方の腕と同期して対称的に動くこと.
b. 下に降ろした状態から、踏み出した前脚と共に腕を前方に出すときは、肘を若干曲げ、腕を内側にひねり(前腕回内)、肘から上げていくこと(肩甲骨面).
⇒このとき、手首はまっすぐにし、グローブの捕球面が投げる方向を向く.
⇒あまり上に上げすぎると、反対側の肩が下がりすぎてしまうので注意する.
c. ボールがトップの位置に来たとき、グローブ腕の肩越しに相手(狙った場所)を見つめ、しっかりターゲッティングをおこなうこと.
d.

そこからボールリリースに移行するとき、内側にひねった腕を、今度は外側にひねり(前腕回外)、脇を締めること.

ここでグローブ腕の脇が甘いと、体幹の回転と共に肘が後ろに引かれてしまう.
こうなると、余計に体幹の回転が加速してしまい、体が早く開くことになる.
ボールリリースの前に体が開いてしまうと、ゼロポジションでのリリースができなくなり、肩の前側に負担がかかる(半身で投げる意識を持とう).
イメージ1…腕相撲で台の端を持つ手(相手と組まない方)の使い方.
イメージ2…柔道で相手と組んだとき、前襟をつかんで引き寄せる動作.
このとき、腕は無理に折りたたむ必要はなく、むしろ体の前に残す.
グローブ腕(前腕)に上体がのっていくようなイメージ.