今中スローカーブの投げ方・握り方

取得難易度:★★★☆ 制球力:★★☆☆ 変化度:★★☆☆ 負担度:★★☆☆ 総合評価:★★★☆
球種タイプ:利き腕と逆方向に曲がる球 
投球の目的:三振を取る、打ち取る

今中スローカーブって??

細身の体型から全盛期には145-146km/hの切れの良いストレートと100km/h前後のスローカーブに,フォークボールや70-80km/hという超スローカーブを混ぜた投球をし、三振の山を築いた今中投手。これらの変化球を意識的に全く同じフォームで投げ分けて打者を翻弄し、捕手の中村武志がリリース直前までサイン間違いかと不安になることも少なくなかったという。

特にカーブの方がストレートよりも力強く腕を振るように見えたため、打者はストレートに差し込まれたりカーブに体が突っ込んだりしやすくなった。今中の代名詞といえるスローカーブは1992年に骨折からのリハビリを機に習得している。(リハビリのキャッチボールで、まっすぐ投げれないためにカーブでキャッチボールしていたことから習得することができた)。

今中スローカーブの握り方

人差し指と中指をボールの中心からずらして縫い目にかけ、非常にゆるく握って親指は添える程度にしていた。

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今中スローカーブの投げ方

この状態から手首をひねらず、人差し指と親指の間からすっぽ抜けるような感じで顔の前でリリースしてベース上に真上から落とすようなイメージで投げ、内外角の投げ分けも出来ていた。しっかりとした腕のしなりで投げる必要があり、腕の振りが良くなれば良くなるほど、ボールへ縦回転が与えられ、ボールの描く軌道は大きくなる。

そのために、ますますボールは上方向へと、リリースされる。打者から見た腕の振りの”速さ”と、実際に投げられた球の”遅さ”にはますます差が出来、打者を惑わす事になる。この様に大きく縦に変化する球を ストライクゾーンに投げるには、リリース時には極端に言えば、上の方向に投げなければいけない。それをストレートを投げる時と同じ腕の振りで自然に行うには、リリース直前のボールの軌道がなるべくきれいな縦の円運動で無ければならない。

円運動であれば、ストレートを投げる時よりも若干リリースポイントを早くすれば、投げた球は自然に上方向に飛んでゆき、きれいな縦回転もかけやすい。これが出来るのは、彼のムチのようにしなる腕・ヒジの使い方があってこその話だ。上に放り投げる感覚で腕の振りを意識して上向きにし、回転をかけながらリリースしなければならない。

今中スローカーブの変化

打者からはストライクゾーンを外れるほど高い軌道から落ちてくるように見える上、ミットに入る前に空回りして止まりそうになるように感じられたという。このためバッターは腰砕けになる事が多く、トーマス・オマリーをはじめ外国人バッターに特に嫌がられた。原辰徳に対して8-9球連続でカーブだけを投げた時には全てファウルになっており、

ファウルを打たせるのにもカウントを取るにも有効なボールだった。また反発力がないため打たれても飛ばず、球速が遅いため打者が必ず反応するなど使い勝手が良い球だったという。また、今中の投げるスローカーブの速度は小さい。遅い球は引力に負けて、大きな放物線を描く。打者もそう予想するが、今中投手の投げるカーブは打者の想像を越えた、はるかな落差の変化を伴った軌道を描いてストライクゾーンに、正に”落下する”。

ボールに強烈なカーブ回転(縦回転)が、かけられており、今中投手はストレートを投げるより、はるかに速く鋭い腕の振りをもってして、ボールに強烈な縦回転を与えている。ストレートを投げる時には、ボールを押す力(そのまま指先にかかる負荷)を、ボールを抜く(力を抜くではありません)事により、強烈な周速度を指先に発生させ、そのエネルギーを回転力としてボールに伝える。このことによって、はじめて強烈なスピンがボールにかかり、遅くて、大きく、鋭い変化がボールに生まれる。

今中スローカーブのまとめ

打者、特に左打者にとっては”魔球”とも言うべき、今中慎二投手のスローカーブ。
その軌道,左打者の基本姿勢では右肩が上がらないように、また、右脇が開かないようにアゴを引いて投手と対峙する。今中投手のスローカーブの軌道の前半は、その姿勢の左打者の視界右上ぎりぎりの位置に捕らえられる。投げられた球筋から予想される通過点は、バッターの頭の後ろを通過する、はるかなボール球だ。カーブだと気づいた打者でも、自分の胸元高めのボール球になるくらいにしか、変化の予想が出来ないらしい。

だが今中投手の投げる球は、打者の予想を上回る大きな変化を見せアウトコース低めに決まる。自分の頭の後ろを通り過ぎるように見える球に対して、アウトローに来るとあらかじめ想定して踏み込むことは、打者にとっては至難の業だろう。なぜそれほど、予想外の大きな変化をするか?左打者にとっては、今中投手のスローカーブを眼で追うことは、アゴを上げなくてはならない事を意味する。

しかも、インハイに来るように見えるカーブだ。懐に呼び込むように早めに身体を開きその球を捕らえようとする。
だが、実際に来た球はアウトローにコントロールされている。
しかも予想以上にボールがそこに来るまでに時間がかかる結果、アゴが上がり身体は開ききった状態で、バットだけはアウトローに持っていこうとする無様な形で空振りをする事になる。

実際の投球では、さらにストレート、フォークの可能性も考えながら打席に入らなくてはならない。
ストレート待ちのタイミングでスローカーブに来た場合、崩された形での空振りになってしまい、
精神的なダメージすら打者に与えているようだ。
このスローカーブを投げるためには力んでいないフォームが必要で、力んで押さえつけるようなフォームの時に投げるカーブは、”ただのカーブ”でそのほとんどが低めのボールになってしまう。押さえつける腕の振りだと、ボールを上方向にリリース出来ないからだ。そのままの小さな直線的な腕の振りで、ボールに強い縦回転を与えようものなら、みんなホームベースの前で、ワンバワンドしてしまう。良いスローカーブを投げるにはきれいな腕の振り、しなりを使って投げなければならない。